いかにして公正な企業活動を守るか(2)

前回の投稿では、不正競争防止法に概略をみてきた。

今回はこれまでに不正競争防止法に違反した事例を見ていく。

まずは、東芝からSKハイニックスにNANDフラッシュの研究データが不正に持ち出された2014年の事件

半導体の心臓部ともいえる回路パターンの微細化にかかわる技術が不正に持ち出され、ライバルメーカに渡されたとあり、東芝としては騒然としただろう。

次にベネッセが顧客情報管理を委託していたシンフォーム社の社員が、顧客名簿を複製、持ち出し、名簿業者に売り飛ばしていた2017年の事件

こちらは個人情報保護法にも触れていて、大きなニュースになったので覚えている人も多いだろう。

いずれにしても、秘密情報にアクセスできる個人がその情報を持ち出し、不正に利益を得ていた。

技術データ、顧客名簿、仕入れ値、すべて企業の営業活動にかかわる重大な営業秘密である。

これらをもう少し抽象化すると、顧客名簿=ヒト、技術データ=モノ、仕入れ値=カネ、である。

いわゆる経営資源が不正利用されやすい、つまり、それだけ重要ということなのだろう。

当ブログと関連が深いのは、モノとヒトだろう。

研究データそのものはもちろん秘匿性が高く、守らなければいけないが、研究者そのものも守らなければいけない。

逆に研究者は、自分が持つ知識や経験が資本であると同時に、不正利用したときの罰則対象になることを理解しておかなければいけない。

今所属している組織から離れる際に、秘密保持の書類に一筆書くことが多いが、その真の意味をよくよく理解しておく必要がある。

言葉を変えると、専門知識と営業秘密の線引き、である。

筆者自身は組織を変えたことがないため、これまでこの線引きを明確に意識したことはない。反省しなければいけない。

他の組織でもがんばれば知りえる情報は専門知識、がんばっても知りえない情報が営業秘密、というところか。

私も含めて、この機会に全研究者には見つめ直してもらいたい。

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